リゼリー・プルンスコットは
フランスガム製菓学院の学生でした。
夏がその重たい幕をゆっくりとおろしかけたある日のこと。
たいくつな午後の講議の時間
リゼリーは教室の窓の外に見える大きなマロニエの木が
近頃少し涼しさを帯びて来た風に葉をゆらせているのを
ぼんやりと眺めておりました。
その葉の緩やかな動きは、
まるで誰かの手招きをするそれにも似ていました。
そうして手招かれるようにして、葉の先まで目をやると
一人の婦人が窓辺に座っているのが見えました。
婦人の大きく波打った紫色の髪はその白い肩を覆い
細い指はワイングラスをゆらし
物憂げに落とされた長い睫毛の下には、一筋の光が見えたのです。

あれは涙?
涙とはあんなに美しいものであったろうか?
「リゼリー・プルンスコットくん!!砂糖の成分は何ですか?」
「ハ!ハイ!

 涙の成分は砂糖ではなくて塩です、先生!」